料理というものは不思議な存在で、同じ食材でも土地や時代によってまったく違う表情を見せます。
ふと、「AIに昔の家庭料理を再現させたら、どんな味が生まれるのだろう」と思い立ち、今回は小さな“食のタイムトラベル”を試してみました。
現代のキッチンに立ちながら、江戸から昭和までを往復するような不思議な体験。その内容をまとめてみます。
江戸の長屋メシをAIで再現する|“一汁一菜”の底力
最初にAIへ指示したテーマは「江戸中期の長屋での日常食」です。
入力した食材は以下のような、ありふれた庶民のもの。
- 大根
- 青菜
- 味噌
- 少しの干物
- 米
AIが提案したのは、野菜の味噌汁、焼いた干物、白いご飯という、実に素朴な献立でした。
ところが、実際に作って食べてみると、このシンプルさが驚くほどおいしく感じられます。
味噌の香りがふっと立ち上がり、大根がほろりと甘い。
豪華ではないのに、どこか心が満たされるような一皿です。
質素な食事の中に、江戸の暮らしの温かさが確かに宿っていました。
明治の家庭へ。文明開化の香りと“洋食の衝撃”
次にAIに投げかけたのは「明治の一般家庭で作られた洋風料理」です。
文明開化の勢いが食卓にも押し寄せていた時代を想像しながら、AIの回答を待ちます。
提案されたのは以下のような献立でした。
- 牛肉と玉ねぎの洋風煮込み
- 薄切りのパン
- 甘いミルクティー
食べてみると、味噌と醤油の世界から一気に西洋へ連れていかれたような感覚になります。
牛肉のコク、パンの軽さ、ミルクティーの甘さ。
食卓が新しい文化と出会った瞬間の驚きが、そのまま料理に宿っているようでした。
明治という時代が持つ“揺れ”や“変化”まで、AIのレシピから伝わってきます。
昭和の台所を再現する|懐かしさが立ち上がる夕食
最後に試したのは、昭和30〜40年代の家庭料理。
AIに「昭和の一般家庭の夕食」と入力すると、どこか懐かしい献立が返ってきました。
- コロッケ
- 千切りキャベツ
- ほうれん草のおひたし
- 味噌汁
- 白いご飯
コロッケを揚げる油の音を聞いているだけで、台所の匂いや温度まで当時の景色が蘇ってきます。
「ただいま」と子どもが帰ってきそうな、あの夕暮れの空気。
AIが出力した料理を作っただけなのに、記憶の扉が自然に開いていくような感覚でした。
まとめ|AIと料理で、時代を旅する体験ができる
作ってみる前は“レシピ生成”という冷静な作業のように思っていましたが、実際にはまるで小さな旅をしているようでした。
料理は時代や地域の空気を運び、AIはその旅の案内人になってくれます。
江戸の質素な温かさ、明治の文化の衝撃、昭和の懐かしさ。
それぞれの食卓をAIとともに再現することで、過去の暮らしに触れる新しい体験がありました。
次は地域別や海外の歴史料理にも挑戦してみたいと思います。
AIと料理の組み合わせは、まだまだ多くの可能性を秘めていそうです。
